株式会社センシンロボティクスと株式会社日立パワーソリューションズは、風力発電事業者や設備管理業者向けにドローンの自動飛行機能を備えた風力発電設備のタワー点検システムを共同開発しました。
ドローンを用いたタワー点検のイメージ
主な点検対象のタワー溶接部分
本システムは、風力発電設備のタワー外部の損傷や劣化箇所の点検を高度化するもので、点検時間を従来の1/10に短縮*1できるとともに、点検品質の向上によって設備の安全性向上を実現します。今回の共同開発では、日立パワーソリューションズが風力事業で培ってきた保守知見を産業用ドローンの活用実績が豊富なセンシンロボティクスのロボティクス技術と組み合わせたことで、ニーズが高まる風力発電設備のタワー点検の品質向上と効率化に対応したシステムの開発を5カ月という短期間で実現しました。
両社は、今回開発したタワー点検システムを風力発電設備の新たな点検サービスとして12月1日から提供していきます。また、2022年4月1日から提供しているブレードトータルサービスに用いられているシステムと組み合わせて点検機能の拡張と一括管理を可能にするシステム開発を推進し、さらなる高度化をめざします。
*1 ENERCON社製風力発電設備で実証試験を行ったところ、当社サービスエンジニアによる従来方法での1基あたりのタワーの点検時間を1/10に短縮できることを確認しました。
背景
風力発電設備は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて導入拡大が加速しています。一方で、2000年代にいち早く再生可能エネルギー事業に取り組んだ発電事業者が所有する風力発電設備については、耐久年数の目安である約20年が経過していることから、経年劣化による損傷が生じて事故につながる原因となるため、信頼性の高い点検が求められています。また、経済産業省は、2023年4月に風力発電設備のタワーの溶接部分の老朽化による倒壊の危険性について発電事業者に緊急点検の実施を要請しました。
その一方で、風力発電設備のタワー点検は、定期点検や月例点検時に望遠鏡やカメラを使った地上からの点検が主体で、異常が確認された場合に、クレーンやロープアクセスで接近して専門技術者による詳細点検を実施するため、点検の精度向上と点検時間の短縮や作業軽減を実現する手法が求められていました。
日立パワーソリューションズとセンシンロボティクスは、これまでにも風力発電事業者向けに、ドローンとAIを活用したブレードの点検システムを共同開発しており、設備の安全性向上・安定稼働を実現するサービス*2を、日立のLumada*3ソリューションの一つとして2022年4月1日から提供開始しています。
*2 日立パワーソリューションズとセンシンロボティクスが共同開発した、ドローンとAIで高精度な点検を実現するブレード点検システムに、さらに日立パワーソリューションズが風力事業で培ってきた保守計画や補修に関する知見を組み合わせてブレードの適切な維持管理を行うサービス
(2022年2月9日ニュースリリース「日立パワーソリューションズが、ドローンとAIを用いた点検・保守計画立案・ブレード補修の風力発電設備向けワンストップサービスを提供開始」) https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2022/02/0209.html
*3 Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。
タワー点検システムの特長
(1)従来比1/10となる点検時間の短縮および作業負担の軽減を実現
点検システムに対象設備の情報や飛行ルート・撮影ポイントを設定することで、ドローンの自動飛行機能でタワー外部の損傷・劣化箇所の撮影を可能にします。従来、地上からの点検で異常が確認された場合に専門技術者がクレーンやロープアクセスで接近して約5時間を要して行っていた点検方法と比較して、点検時間を1/10に短縮します。また、従来方法のような高所での点検を要しないため、作業負担の軽減と安全性を確保します。
(2)風力発電設備の製品仕様やサイト情報に応じた飛行ルートを自動生成
点検に必要な風力発電設備の製品仕様や対象設備の設置位置(緯度や経度)などのサイト情報をマスターデータとして登録することでドローンの飛行ルートを自動生成します。これにより、同一の設備で、常に同じ位置・範囲の撮影画像の取得が可能になります。また、撮影画像には、サイト情報や飛行位置が記録されるため、同一条件での設備状態の過去データとの比較や傷の進展度合いの確認や適切な点検記録管理が可能になり、最適な保守計画の立案を支援します。
ドローンの飛行ルートイメージ
(3) ドローンによる5方向からの高精度な撮影による高品質な点検
ドローンが自動で飛行して5方向からタワー外部を高精細に撮影することができるため、従来の望遠鏡やカメラを使って地上から確認する方法に比べて、ブレードによる死角を回避するなど、タワー全体の点検および損傷・劣化箇所の位置やサイズなどの詳細な確認を可能にします。
5方向から撮影した例
関連情報
「ブレードトータルサービス」に関するウェブサイト
https://www.hitachi-power-solutions.com/energy/wind-solor/wind-power/service/index.html
日立パワーソリューションズについて
日立パワーソリューションズは、エネルギー・インフラ関連分野において、デジタルを活用したサービス事業やグリーン事業を展開し、「サービス」「グリーン」×「デジタル」に関連した事業で蓄積した技術やノウハウを基盤に、エネルギーや社会インフラを支えるとともに、お客さまや社会の課題解決に貢献するソリューションを提供し、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。
詳しくは、日立パワーソリューションズのウェブサイト(https://www.hitachi-power-solutions.com/)をご覧ください。
プレスリリースはこちら:https://www.sensyn-robotics.com/news/hitachi-power-solutions_01