中部電力パワーグリッド株式会社と共同で「送電設備の異常を自動で検出するAI」を開発

株式会社センシンロボティクスと中部電力パワーグリッド株式会社は、これまで共同で送電設備異常を自動で検出するAIを開発してまいりました。
このたび、新たにリアルタイム異常検出における対象範囲の拡大および鉄塔ボルト脱落・錆検出に関するAIを開発し、本日、中部電力パワーグリッドが保有する送電設備の点検での導入を決定いたしましたのでお知らせいたします。

センシンロボティクスと中部電力パワーグリッドは、ドローンを用いた送電設備自動点検技術を共同開発し、この技術を架空送電設備の保守業務に特化した業務アプリケーション『POWER GRID Check』に実装し、2021年から現場運用を開始しています。この技術により、高度な操縦スキルを必要とせず、自動かつ高品質な設備の点検、撮影が可能となりました。一方、取得した画像の確認は作業員の目視で実施しており、多大な労力を要するとともに、異常個所の判定は個々の作業員の経験に基づく判断に委ねられていました。
このため、画像解析による異常箇所を検出するAIを開発し『POWER GRID Check』に実装することにより、ドローンによる画像取得から異常判定までを自動で実施することが可能となりました。

【技術確立成果】

◾️リアルタイム異常検出AI

公衆保安確保の観点から、第三者に対し災害の発生する恐れのある異常は早急に発見する必要があります。これまで、手元のモバイルデバイスに伝送されるドローンのリアルタイム映像(ライブストリーム映像)をもとに、「電線」の素線切れ・溶損や、「がいし」の破損・欠けといった異常をリアルタイムに検出するAIを開発し、2023年度からすでに現場運用を開始しておりますが、今回、新たに電線付属品である「ダンパ」※1の重錘脱落や、「スペーサ」※2の把持部外れ等をリアルタイムに検出するAIを開発しました。

※1 電線の振動や着雪の成長を抑制するための装置
※2 電線相互を規定の間隔に保つための装置

【「がいし」リアルタイム異常検出】

real-time-anomaly-ai-detection-for-insulators

【「電線」リアルタイム異常検出後の結果表示】

real-time-anomaly-ai-detection-for-power-lines

 

【モバイルアプリケーションで「ダンパ」と「スペーサ」を検出した様子】
※画面は開発段階のものになります

real-time-anomaly-ai-detection-for-dampers

real-time-anomaly-ai-detection-for-spacers

 

◾️鉄塔ボルト脱落・錆検出AI

鉄塔に関する異常について、「ボルト」の脱落や「鉄塔錆」を検出するAIを新たに開発しました。鉄塔種別(アングル鉄塔、パイプ鉄塔の2種)と鉄塔塗装色(未塗装、防錆塗装(グレー)、航空標識塗装(赤白)環境塗装(茶色)の4種類)別に学習・評価を実施しているため、様々な種類の鉄塔の異常を検出することができます。
「鉄塔錆」検出については、錆の度合いに応じたランク分類も可能です。

【通常画像】

transmission-tower-Image-without-rust-detection

【錆検出後の画像】

transmission-tower-Image-with-rust-detection

 

【錆異常検出インターフェース】

rust-anomay-ai-detection-interface

 

【今後】

今回、新たに開発した「ダンパ」「スペーサ」「ボルト」「鉄塔錆」に関する異常検出AIは、2024年度中に『POWER GRID Check』への実装を行い、現場運用を開始します。異常検出結果は、『POWER GRID Check』上に強調表示され確認することができます。開発したAIモデルは今後も精度向上に向けた継続的な学習が必要となるため、ユーザーのフィードバックを元に、再学習やアルゴリズムの再選定を行い、AIを高性能化するスキームを構築します。

また、変電設備への業務適用も視野に共同研究開発を行っており、変電業務向けに確立した「計器指針検出AI技術」に関しても『POWER GRID Check』への実装を来年度以降で予定しています。送電設備だけでなく変電設備の保守・保全業務も担えるアプリケーションへと開発を進めていき、引き続き一般送配電事業全体への適用を目指してまいります。

 

『POWER GRID Check』とは

センシンロボティクスと中部電力パワーグリッドが共同研究にて開発した技術をベースとした、ドローンを活用した送電設備点検アプリケーションです。鉄塔(支持物・がいし)と送電線(架空地線・電力線)を一括で自動点検できることが特徴で、ドローンと設備の間の安全な離隔距離を確保したうえで、自動航行により均一したデータ取得を行い、ドローンに関する特別な知識を持たない作業員でも簡単に送電線点検業務を実施することが可能です。

【POWER GRID Check概要図】

power-grid-check-overview-1

プレスリリースはこちら:https://www.sensyn-robotics.com/news/power-grid-check-ai-detection

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