センシンロボティクスは2022年6月に、送電設備の点検保守業務におけるドローンを活用したアプリケーション「POWER GRID Check」の提供を開始しました。

今回は、電力インダストリーチームのリーダーであり、「POWER GRID Check」技術開発研究におけるプロジェクトマネージャーの「益田 尚弥」にプロジェクトの苦労や裏側、センシンロボティクスにおけるプロジェクトマネージャーはどういう役割なのかをインタビューしました。

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プロフィール
益田 尚弥(ますだ たかや)

クリエイティブ・プロダクションにて、ビデオグラファー・クリエイティブ・ディレクターを担当。
2019年7月にセンシンロボティクスへ入社。
電力インダストリーのチームリーダーとして、主に電力業界に関するアカウントの新規開拓や、ビジネスを拡大する為の提案活動を行う。研究開発における企画・設計、プロジェクトマネージャーとしてのデリバリー領域も担当。
現在は送電設備点検アプリケーション「POWER GRID Check」のプロダクトオーナーとして活躍。
益田さん顔写真

 

インタビュアー
大野 椋風(おおの りょうか)
人事採用担当(2022年5月入社)
大野写真


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==目次==

  • 企画提案~プロダクトのグロースまで一貫して関わることができる
  • 電力業界特有のカルチャーを知る人ほど活躍できる場が多くある
  • 100名規模のベンチャーにいながら数万名規模の顧客課題を解決できる
  • 成長し続けて社会にインパクトを残していきたい
  • 最後に

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企画提案~プロダクトのグロースまで一貫して関わることができる

大野:本日はお忙しいところありがとうございます!
「送電線鉄塔設備点検アプリケーション“POWER GRID Check”」の提供開始、おめでとうございます!

益田:ありがとうございます!

大野:今回は、「POWER GRID Check」リリースに至るまでの裏側や、プロジェクトマネージャーに関することをお伺いさせていただきたいと考えています。
実際に、益田さんがプロジェクトマネージャーとして何を考えながらどのような仕事をしているのか、採用担当の立場からも気になっている部分なのですが、見ている限り多岐に渡って色々な業務をされている印象があります。最初は、どのような流れでプロジェクトが始まるのでしょうか?

益田:プロジェクトのスタートは2パターンあります。①顧客からの要望に基づいて提案をするパターン。②当社から顧客へダイレクトに提案をするパターン。
受注に向けた活動からプロジェクトマネージャーも参画し、営業チームと協働しながら準備を行い、顧客に提案していく流れとなります。

大野:提案からプロジェクトの完了まで、平均的にはどれくらいの期間を要するのでしょうか?

益田:案件によるため一概には言えませんが、実現性の調査~研究開発~ソフトウェア開発~システム連携~リリースという流れで進めていきますので、最低でも1年以上は必要という感覚です。

当社ではベースとなるシステムやアプリケーションを複数持っていますが、お客様のご要望に合わせてカスタマイズしながらプロダクトを提供することが多いです。
そのため、プロジェクトに参加している各チームの様々な職種のメンバーと認識を擦り合わせながら調整をしていくことにも時間を要します。
例えば、「前提としてシステムの設計上で実現可能なものであるか」ということについては、開発エンジニアと、「今回の現場に適しているロボットはどれか、ドローンの飛行経路はどうするか」ということについては、ロボティクスグループのプロダクトマネージャーやパイロットと、「現場の人はどのようなユーザーインターフェースだと使い易いのか」ということについては、UI・UXデザイナーと擦り合わせながら進めていきます。

※某プロジェクトに関わる職種と役割の一例(共同研究とシステム開発が区分されていないプロジェクトもあります)PGC体制

他にも、「サービスを安全にご利用いただくために注意するポイントはどこか」「実際にプロダクトを開発するにあたってどれくらいの時間や費用が必要なのか」など、確認することは多岐に渡ります。

大野:実際に、「POWER GRID Check」がリリースされるまでにどれくらいの期間を要したのでしょうか?

益田:2020年頃から取り掛かっていましたので、約2年程かかりました。
具体的には、まず技術的な実現性を調査し、当社の既存プロダクトでは解決できない課題を洗い出し、課題解決における要素技術の仮説検証を行うための研究を、1年かけて行いました。
続いて、研究開発で確立した要素技術を動かすための基盤開発及び、システム連携開発に1年かけてリリースをしました。
開発工程を機能単位に分けて小さいサイクルで繰り返すアジャイル開発を適用し、開発優先順位を付けながら、完成した機能から随時リリースし、最終的にそれらの機能を組み合わせることにより、プロダクト(製品)化まで持っていきました。

大野:非常に長い期間と大きなコストをかけているのですね。

益田:当社の場合は、「プロダクトを一回作ってそれで終わり」ではありません。
長い期間と大きなコストをかけてプロジェクトを進めている分、そこからしっかりとマネタイズしていくことが最も重要です。
プロジェクトを進めていく中で、「どのようにしたらもっと使い易くなるのか」「他のお客様にも展開することが出来ないか」「どれくらいの期間でどのようにして売り上げを作っていくか」など、リリースしたプロダクトをグロースさせていくことを考えることが求められます。

大野:当社のプロジェクトは、「最初に設定したゴールに到達すれば終わり」というわけではなく、そこから更なる拡大や新しいプロダクトを創出していく取り組みが大切なのですね。

「プロジェクトマネージャー」と言えば、顧客からのご要望に対して商品を納期通りに提供するために、ヒト・モノ・カネをどのように動かしていくのか、これらをコントロールしていく仕事がメインという印象を持っていましたが、益田さんのお話を聞く限りだと、コンサルタント業務に近しい部分もあるように思えますが、その点いかがでしょうか?

益田:そうですね。コンサルタントに近い部分もあると思いますが、自社のプロダクトをベースにプロジェクトを推進していく部分や、プロダクトのグロースまで手掛ける部分を加味するとコンサルタントとも異なり、独自性のあるポジションニングだと思います。

電力業界特有のカルチャーを知る人ほど活躍できる場が多くある

大野:今回は電力業界向けのプロダクト開発となりましたが、現在の電力業界ではどのようなことが課題として挙げられるのでしょうか?

益田:社会インフラ業界全体に言えることではありますが、高経年設備の増加や労働人口減少などは電力業界においても大きな影響を及ぼしています。
また、災害の激甚化などによって事業環境が大きく変化していたり、環境問題改善の取り組みとして再生エネルギー設備の導入拡大が求められていたり、電力業界の課題解決における難易度は年々増している状況です。
こうした課題に対して、ロボットやAIなどの最先端テクノロジーを活用することにより、電力設備保安の高度化や現場業務の生産性向上が求められています。

大野:そのような状況において、電力業界向けだからこそ、工夫・意識して取り組まれていたことはありますか?

益田:課題解決に繋がる提案を行うためには当然のことかもしれませんが、電力業界が抱える課題や社会背景などを踏まえた上で、顧客の要求を深堀りする必要があります。
そのため、まずは現場感や業務プロセスなど、電力・エネルギー業界のことを理解することを最優先しています。
特に電力業界は会社間の繋がりが強く、ワークフローも似ている部分が多いため、一つの会社の業務内容を部署ごとにしっかり理解することで、各電力会社へ均一化した内容の提案を行うことができますので、イレギュラーを減らしながら効率的にプロジェクトを進めることができます。

画像5
※中部電力パワーグリッドさまと当社の共同研究時に撮影された写真

大野:「電力業界の現状をどれだけ理解できているか」が重要ということですね。

益田:当社は電力業界の顧客も多いため、電力業界特有のカルチャーを知る人ほど、活躍できる場が多くあると思います。
特に、現場を知っている方であれば、顧客の気持ちを本質的に理解することができますので、プロダクト開発を推進するにあたり、大きなアドバンテージになると思います。

益田さん3

100名規模のベンチャーにいながら数万名規模の顧客課題を解決できる

大野:ここまでは、プロジェクトにおける業務を色々お伺いしてきましたが、改めて「今回のプロジェクトの中でこれが一番難しかったな」と思う点はどこでしょうか?

益田:これは今回のプロジェクトに限った話ではないと考えているのですが、当社が対象顧客としている企業は、各業界の中でも最大手・最大規模の企業が多く、「協働パートナーの立場として、どのように信頼を得るのか」ということが非常に大切でありながら難しく感じているところです。
また、実務でいえば、世の中にない発明、いわゆる「世界初」の技術を開発していきますので、アーキテクチャ・設計・開発プロセスなども短いスパンでアップデートが繰り返され、いくら完璧な計画を立てても、その通りに実行されることはほとんどありません。
その中でも、プロジェクトを納期に向けて動かし続ける必要がありますので、可能な限り現実的な計画・開発プロセスを考え、ステークホルダーと合意していくことに毎回苦労しています。

大野:業界特性や企業規模を鑑みれば複雑なレギュレーションが想定されますし、正確な状況把握と、臨機応変な対応が求められますよね。

益田:そうですね。
決裁権を持つ方やキーマンとなる方が誰なのかを把握すること、課題特定から解決までのロードマップを明確にすること、それを正確に伝えるためのプレゼンテーション、開発エンジニアと現場へ同行してその場で開発提案して貰えるように巻き込むこと、様々なことを準備しながらいかにして顧客の合意を得ていくのか、それぞれ責任を持ってプロジェクトを進めていくことが重要です。

大野:様々なことを想定しながら、複数プランを並行して準備していくことは難しそうな印象を受けますが、裏を返せば、それがやりがいとも言えるのでしょうか?

益田:はい、とてもやりがいがあります。
業務の幅も広く、責任を持てる仕事であり、「社会の当たり前を変える」「課題先進国の日本を変える」という大きなミッションに対して、自分が中心となって進めていけることや、プロジェクトファイナンスのコントロールも含めて、大きな裁量を持てる仕事は、他を見てもなかなかないのでは?と思っています。
「POWER GRID Check」は開発フェーズを終えて、これから導入期・成長期という形で、シェアの拡大を目指すフェーズに入っていきます。
実際、顧客にご利用いただけるプロダクトとしてリリースされたことはすごく嬉しいですし、やっていて良かったなと感じています。

大野:当社のような社員数100名規模のベンチャー企業が、数万人の社員を抱える大手電力会社や業界の課題を解決するというやりがいも然り、幅広い業務経験ができることは今後のキャリアにおいてもポジティブですね。

益田さん-1

成長し続けてインパクトを残していきたい

大野:本日は、お時間をいただきありがとうございました。
最後に、益田さんが今後センシンロボティクスで成し遂げていきたいことや目標などがあれば教えていただいてもよろしいでしょうか?

益田「POWER GRID Check」なのか、他のプロダクトなのかはまだ分かりませんが、業界のデファクトスタンダードになるようなプロダクトを創出していきたいですね。
「社会の当たり前を進化させていくこと」に使命感を持って働いていますので、個人としても社会にインパクトを残すことができるよう、成長を続けていきたいです。


最後に…
センシンロボティクスにご興味をお持ちいただけた方は、カジュアル面談も可能となりますので、お気軽にお問合せ下さい。