2024年6月、マイクロソフト品川本社にて生成AIコンテスト「第2回 AI Challenge Day」が開催されました。日頃から生成AIを活用する10社が集まり、技術力とアイデアを2日間で競うハッカソン形式で行われました。AIを活用して社会インフラDXの実現を目指すセンシンロボティクスも参加し、見事「アスキー賞」を受賞しました!本レポートでは、イベントの概要やセンシンロボティクスの生成AIへの取り組みについてご紹介していきます。

技術観点では、先行してQiitaにも記事をアップしています。こちらもぜひご覧ください!
GPT-4oのAzure OpenAI APIで作るRAGシステム ~AI Challenge day 第2回参加報告を兼ねて~

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コンテストのテーマは「独自文書の検索」

参加企業に与えられたテーマは、世界遺産について応答するシステムでした。つまり「独自文書の検索」です。

ascii_theme日本マイクロソフト株式会社提供:テーマ提示資料内より抜粋

ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)は、人間と遜色ないレベルで文章を解釈・生成できることは、皆さまご存知でしょう。しかし、これらのLLMは学習に用いた情報(一般的にはインターネット上の情報)の範囲でしか回答ができません。実際の業務で活かすためには、独自文書についても回答する必要があります。例えば、業界に特化した規則や最新ニュース、自社独自の情報である対応履歴やマニュアル等の文書です。これらを解決する手法として「RAG:Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)」という仕組みが、注目を集めています。

retrieval-augmented generation日本マイクロソフト株式会社提供:テーマ提示資料内より抜粋

上図はRAGのアーキテクチャを説明した図です。(日本マイクロソフト様作成)「AIオーケストレーター」という役割がナレッジを検索し、その検索結果をLLMにわたす仕組みとなっています。LLMは、AIオーケストレーターから与えられた文書を参照しながら回答を作成します。AIオーケストレーターは、利用者の質問文を手がかりに、大量の関連文書から該当する箇所を抽出しなければなりません。また、「この画像のお寺はどこ?」と聞かれたら、類似した画像をもとに該当箇所を抽出する必要があります。

名だたる10社の中で、アスキー賞を受賞

センシンロボティクスからは、生成AIプロジェクトに普段から関わる3名で参加しました。事務局から与えられたデータはPDFやExcel、画像など多岐にわたっていたため、データの特徴に応じたシステムへの取り組み方を考える必要がありました。マニュアルや対応記録簿等、普段から様々なデータを扱っていたため、焦ることなく必要な前処理に淡々と取り組むことができ、1日目で一定の回答精度を達成できることを確認できました。「せっかくの機会なので、やったことが無いことを楽しもう!」と考え、そこからは「RAGとRoboticsとの連携」に挑戦してみることにしました。センシンロボティクスは現場に設置されるカメラやセンサー、ロボティクスも含めて提案できることを強みとしています。そこで、RAGに問合せる主体もチャットボット画面ではなく「ロボットにしたらどうだろう?」と考えました。

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上図が、我々が実証した構成です。人間がチャットボット等に問い合わせるのではなく、カメラを搭載したロボットが直接RAGに問い合わせる仕組みです。ロボット(ROS:Robot Operation Systemをプラットフォームとして使用)とAzureのプラットフォームとは、どちらも Python の言語で制御することができるため、親和性も高いですし、ロボットが持つセンサー情報(緯度経度等)も組み合わせることでRAGの問い合わせのバリエーションも広がると考えました。また、このようなアプリの提供者は自治体等であることが予想されます。「責任あるAI」の視点から、回答文生成の箇所に「Azure AI Content Safety」を用いて、回答の安全性を事前チェックする仕組みを設けました。
結果は見事、アスキー賞を受賞!「ロボットを使うところにワクワクする。コンテンツセーフティの観点でAIの精度にも意識があり、攻めと守りのバランスが非常に良い」と嬉しい講評をいただきました。

生成AI活用のご相談はセンシンロボティクスまで

センシンロボティクスでは、様々な生成AI活用のご相談をお受けしています。ご相談の多いケースは以下のようなものがあります。気軽なご相談からでも構いませんので、ぜひお問い合わせください。

  • 勉強会・ワークショップ|生成AIの活用範囲や注意点を理解したい。組織内で活用できる範囲を意見出ししたい
  • ナレッジの検索・生成|社内のマニュアルや対応記録などの検索に時間がかかっており、検索やひな型の作成を省力化したい
  • 作業の自動化|申請内容にもとづいた自動分類や、申請された内容のレビュー自動化を行いたい

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AI Challenge Dayとは

「AI Challenge Day」は、株式会社角川アスキー総合研究所と日本マイクロソフト株式会社により企画された2日間のハッカソン形式で開催されたイベントで、日本マイクロソフトのパートナー企業10社が参加しました。今回は、日本の世界遺産を紹介するアシスタントの開発に挑戦し、生成AI技術におけるRAGアーキテクチャの実装に関して競い合いました。

今回の「AI Challenge Day」の様子は、アスキーのYoutubeチャンネルよりアーカイブ配信をご覧いただけます。

AIを乗りこなせ!10社の熱戦が繰り広げられた第2回「AI Challenge Day」レポート
・ 0:34:03~センシンロボティクスのプレゼンテーション
・ 2:05:43~結果発表・表彰式