エンジニアとしてスキルアップや次のキャリアを考える際、今後取り組む開発・技術領域の幅やポジションの役割や責任範囲は非常に重要な点だと思います。

今回は、当社の注力プロダクトである電力業界向けの送電設備点検アプリケーション『POWER GRID Check』の開発事例に基づいて、各職種のエンジニアの業務内容について説明します。

 

 

1. 『POWER GRID Check』とは?

架空送電設備の保守業務における、ドローンを活用した送電設備点検アプリケーションです。当社は、各インフラ業界の課題を解決することを通じて、以下の社会課題の解決を目指しています。

・私たちの社会生活を支えるインフラ設備の老朽化、自然災害リスク
・少子高齢化や産業インフラを支える技術者の高齢化による労働人口の不足

本アプリケーションは電力業界向けソリューションとして、以下の設備保守・点検業務における課題を解決しております。

・設備点検作業員の危険作業の回避や労働環境改善
・業務の省人化、コスト削減
・自動点検による業務品質の平準化、向上
・撮影データの自動分類による業務効率化

上記の課題を解決するために、当社が開発する送電設備点検アプリケーション『POWER GRID Check』とドローンとの通信・制御を行うモバイルアプリケーション『SENSYN Flight Edge』という2つのアプリケーションとドローンを活用しております。ここから、『POWER GRID Check』による設備点検のフローを具体的に説明します。

『POWER GRID Check』による設備点検のフロー

1.Webアプリケーション『POWER GRID Check』に送電設備情報と座標情報を入力し、自動航行ルートを生成
2.ドローンとの通信・制御を行うモバイルアプリケーション『SENSYN Flight Edge』で航行ルートを取得し、ドローンへ送信
3.ドローンがその飛行ルートに沿って自動航行し、送電設備を撮影

PGC1

4.撮影完了後、Webアプリケーション『POWER GRID Check』にデータをアップロード
5.撮影した数万枚単位のデータを鉄塔の各部位に自動的に分類、管理

従来の設備点検業務と比較し、上記のソリューションを通じて以下の点を実現しています。

✓ドローン活用を通じた業務の省人化、コスト削減
✓自動航行による業務品質の平準化、向上
✓自動分類によるデータ仕分業務の効率化

その後のデータ利活用は、自動仕分け機能により各部材ごとにデータを管理し、点検業務に活用いただいております。

 

 

2.『POWER GRID Check』開発における各エンジニアの業務内容と役割

本アプリケーション開発における各エンジニアの業務範囲と役割を以下に図解してみました。

PGC2

上記の図を通じて、全体の役割分担や各エンジニアの担当領域をイメージいただけるのではないでしょうか。PdMや他のポジションとの役割分担、開発の進め方については、『POWER GRID Check』のPdM担当者のインタビュー記事をご参考にしていただけると幸いです。

当社では、ドローンのハードウェア開発ではなく、当社が開発するアプリケーションによるドローン制御、Web/モバイルアプリケーション開発にリソースを集中しております。ドローン制御による「データ取得」、取得した「データ分析」、「データ利活用」のアプリケーションを効果的に組み合わせることが、難易度の高い顧客課題の解決に繋がると考えております。

ここから、各アプリケーション開発やデバイス制御を担う各ポジションの業務内容や役割を具体的に説明していきます。あくまで送電設備点検アプリケーション『POWER GRID Check』の開発における役割のため、担当するアプリケーションやプロジェクトによって業務内容や役割は異なります。


 

Webアプリケーションエンジニア

Webアプリケーション『POWER GRID Check』の以下の各種機能の開発を担当しています。

・送電線や鉄塔の設備情報の入力処理
・自動航行ルートの作成機能
・自動航行ルートの情報をモバイルアプリケーション『SENSYN Flight Edge』に転送するためのAPI
・ドローンで取得した各種データをシステム上で保存、分類、表示する機能

PGC3

開発環境は、サーバーサイドはNode.js、フロントエンドはNuxt.js、言語はTypeScriptを使用しています。3D地図プラットフォーム『Cesium』等の測量、点群データやGIS情報データの入出力処理、GIS関連の各ツールとの情報取得設定も本ポジションの醍醐味です。

 

モバイルアプリケーションエンジニア

ドローンとの通信・制御を行うモバイルアプリケーション『SENSYN Flight Edge』の以下の機能開発を担当しています。

・Webアプリケーション『POWER GRID Check』から取得した飛行ルートの情報入力処理
・ドローンへの転送設定
・ドローンが撮影する映像をAndroid端末に表示するための各種機能

PGC4

開発言語は、Java/Kotlinを主に使用しています。ドローン周辺の豊富なUIの構築、カメラで撮影した映像の画像処理、AIより画像から物体検出を始めとした新しい技術に挑戦できる点が魅力です。

 

IoT/ドローン通信エンジニア

当社独自のモバイルアプリケーションを通じてドローンを制御、自動航行させるため、以下の業務を担当しています。

・各メーカーの仕様書やマニュアルから必要な情報の調査
・通信方式/API設計や通信モジュールの開発
・連携するドローンやモバイルアプリケーション『SENSYN Flight Edge』の動作検証
・動作ログ分析による接続不具合の解消

開発言語としてはC++を使用しており、Webアプリ側との共通プロトコルに合うように各ドローンメーカーの独自プロトコルを翻訳し、シミュレータや実機での検証を繰り返して開発を行います。一例として、電線を物体検知し、ドローンが電線を追従するシステム開発にも取り組んでいます。

 

ロボットエンジニア

標準のドローンやロボットをカスタマイズして独自の制御を行うシステムの開発を担当しています。

・LiDARやステレオカメラなどの各種からの自律制御システム開発
・顧客の目的に応じたROSを使用したドローン動作の制御

開発環境ではミドルウェアとして主にROSを利用し、言語としてはC++やPythonを使っています。顧客の利用方法を想定し、適切なセンサやハードウェアの選定から制御アルゴリズムの開発まで行います。通信、音声や画像や点群などのセンサ処理、走行制御といった幅広い経験を積むことができるのが魅力です。

 

画像処理エンジニア

取得した画像データ等を活用した画像処理、解析を担当しています。

・機械学習によるデータ分類や異常検知機能の開発
・ディープラーニングの各モデルの構築、精度の比較検証
・点検対象物に応じた精度の高いモデルを実装

開発環境ではプラットフォームとしてAzure Machine Learningを、フレームワークとしてPyTorchを利用しています。本ポジションでは、幅広いドメインに対する開発に携わることができ、構築したモデルで実際の社会課題の解決に寄与できるという魅力があります。本プロジェクトではないですが、一例として、太陽光パネルの故障や汚れを検知するシステムを機械学習で構築し、太陽光発電所の点検効率化の実現をサポートしています。

 

インフラ・サービス基盤エンジニア

各アプリケーションの安定稼働のために、サービス基盤の構築、運用を担当しています。

・安定稼働させるために、システム監視、アラートの設計、構築
・Terraformでのクラウドインフラの運用の仕組みを構築
・GitHub Actions での CD/CI の構築、サポート
・ログ収集、解析基盤の設計、構築

開発環境は、クラウドプラットフォームとしてMicrosoft Azureを、コンテナ環境としてKubernetesを利用しています。サービスが急速に成長しているため、複数のサービスが安定運用するための基盤整備や仕組み構築はまだまだ発展途上の段階です。改善の余地がある環境だからこそ、創意工夫し、成長できる環境があります。安定運用から開発者体験の向上を実現させていくには地道な努力も多いですが、開発全体の品質向上や生産性改善に貢献できる点は本ポジションの魅力です。

 

QAエンジニア

各アプリケーションの品質向上のためのQA業務全般を担当しています。

・テスト設計、開発メンバーとのテスト内容のすり合わせ
・テスト計画策定、テストスケジュールの調整
・テスト運用、テストケース作成、改善

少人数精鋭でのQA体制のため、テスト業務の旗振り役から実務まで担います。ドローンを使った実地検証にはアプリケーションの開発者が同行します。Webアプリケーション、モバイルアプリケーション、ドローンデバイス等扱う技術領域が広く、その点が本ポジションの魅力でありつつ、チャレンジングな点になります。

 

テックリード(Web・モバイルエンジニア/AI_edgeチーム)

現在、Web/モバイルアプリケーションを開発するチームと画像処理/ロボット制御を担うAI_edgeチームにそれぞれテックリードがいます。各アプリケーション開発・改善から運用において以下の業務を担当しています。

・プロジェクトにおける開発・運用方針策定
・プロジェクトメンバーや業務委託の方への業務指示、コードレビュー
・メンバーへのフォローアップや技術指導
・サービス機能拡充における最適な技術選定、アーキテクチャ設計

開発マネージャーやPdMやPjM等のビジネス側のメンバーと連携し、技術的側面から開発、運用を牽引しています。

 

エンジニアリングマネージャー

テックリードは技術リードを担当する一方で、エンジニアリングマネージャーは以下の業務を通じて開発組織の生産性向上のためピープルマネジメントを主に担当します。

・経営陣とともにエンジニアの人員計画を策定
・テックリード・メンバーとの目標設定
・1on1、各開発チーム間の調整
・社内、社外への情報発信の推進
・中途エンジニア採用

 

XRエンジニア

POWER GRID Checkの案件には携わりませんが、XR技術を実装した新規プロジェクトが進んでおり、技術的側面からXR案件を推進いただくポジションもあります。本ポジションでは以下の業務を担当します。

・XR技術を用いたサービスの全体像をPjMと共に検討
・サービスの要件から設計・実装・試験の計画立案
・アーキテクチャ設計、実装

サービス運用を開始した後は、フィードバックを取得し、サービスの改善活動を担当いただく予定です。

 

 

3.最後に

今回は、送電設備点検アプリケーション『POWER GRID Check』の開発に関わる各エンジニアの役割を紹介いたしました。当社の開発・技術領域やポジションの理解が深まりましたら、非常に嬉しく思います。今後、各ポジションを詳しく取り上げる記事を出していく予定ですが、本記事を通じて当社のプロダクト開発の全体像と各ポジションの役割を思い出していただけると幸いです。

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